あん摩マッサージ指圧は、揉むだけの技術ではない。

 

あん摩マッサージ指圧は「揉むだけ」の技術ではない

あん摩マッサージ指圧は、単に臥位で身体を揉むだけの技術ではありません。その歴史を振り返ると、

日本のリハビリテーション黎明期において、理学療法士制度が成立する以前から、

あん摩マッサージ指圧師や理療士系の職員が、機能訓練に深く関与していた実態が確認できます。
 

理学療法士制度以前から存在した「機能訓練」への関与

リハビリテーションセンター鹿教湯病院の実践を振り返った市川英彦らの論文では、鹿教湯の初期について、当時はまだ「理学療法士及び作業療法士法」が制定されておらず、科名も「理学診療科」であり、盲学校の卒業者である理療士やその助手が訓練に当たっていたことが示されています。

これは、理学療法士制度が整備される以前の医療現場において、理療士系職員が現在のリハビリテーションに近い領域を担っていたことを示す重要な事実です。
 

歩行訓練はマッサージと無関係ではなかった

また、肢体不自由児教育の現場においても、治療内容としてマッサージ、歩行訓練、治療体操などが同じ機能訓練体系の中に位置づけられていました。

さらに、理療師が機能訓練の担当者として配置されていたことからも、歩行訓練がマッサージと無関係な別領域として扱われていたわけではないことがわかります。

つまり、歩行訓練や起立、立位保持、移乗動作などは、身体機能を維持・改善するための治療的訓練の一部として、マッサージや治療体操と一体的に扱われてきた歴史があります。
 

昭和40年の国会答弁が示す重要な事実

昭和40年の国会答弁では、病院マッサージ師について、PT法制定以前から「ほぼ理学療法と同じような療法」を行っていた者が相当数いたと、政府委員が述べています。

「病院におきましていわゆる病院マッサージをやっておられる方につきましては、従来この種の、この法律はございませんでしたけれども、ほぼ理学療法と同じような療法をやっておられる方が相当数あるわけでございます。」

この答弁は、あん摩マッサージ指圧師の業務を、単なる揉捏や慰安的マッサージに限定する理解が、制度形成の過程や当時の実態と合わないことを示しています。
 

あん摩マッサージ指圧師と理学療法士は同一資格ではない

もちろん、あん摩マッサージ指圧師が理学療法士と同一の資格になるわけではありません。理学療法士には理学療法士としての制度上の位置づけがあり、医師の指示のもとで理学療法を行う専門職としての役割があります。

一方で、あん摩マッサージ指圧師もまた、単なる慰安的なマッサージに限定される存在ではありません。
 

あん摩マッサージ指圧の職能的範囲

あん摩マッサージ指圧では、施術目的に応じて、以下のような内容を一体的に行うことが考えられます。

  • 筋緊張の緩和
  • 疼痛の軽減
  • 関節可動域の維持・改善
  • 起立動作の支援
  • 立位保持の確認
  • 移乗動作の誘導
  • 歩行誘導
  • 身体機能の維持・改善を目的とした運動的関わり

これらは、あん摩マッサージ指圧の歴史的・職能的範囲の中で理解されるべきものです。
 

あん摩マッサージ指圧とは

あん摩マッサージ指圧は、「寝かせて揉むだけ」の技術ではありません。

日本のリハビリテーション黎明期には、理療士や病院マッサージ師が、機能訓練や理学療法的な領域に関与していた実態があります。

また、歩行訓練や治療体操も、マッサージと同じ機能訓練体系の中で扱われてきました。

したがって、あん摩マッサージ指圧師の業務を、単なる揉捏や慰安的マッサージに限定する理解は、歴史的実態にも制度形成過程にも合いません。

あん摩マッサージ指圧は、筋・関節・疼痛・動作・生活機能に対して総合的に関わる、身体機能の維持改善を目的とした専門的手技であると考えられます。
 

参考資料

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